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EARTH,WIND & FIRE / ALL 'N ALL(邦題:太陽神)~EWFの1枚を僕が選ぶなら迷わずこれ


アルバイト代や小遣いを貯めて、自分用のレコードプレイヤー、アンプ、スピーカーを買い揃えたのは、'83年のことと記憶しています。


ステレオ・セットとしては、まだカセットデッキなどが足りませんでしたが、待ちきれず、LPを数枚立て続けに買いました。


それらは、Herbie Hancock の「Future Shock」('83)や、細野晴臣の「Philharmony」('82)など、主に当時の話題作でした。


ですが、1枚だけ、6年前('77)に発売されたアルバムもありました。EARTH,WIND & FIRE(アース・ウィンド・アンド・ファイアー)の「ALL 'N ALL」(邦題:太陽神)です。お目当ては「FANTASY」(邦題:宇宙のファンタジー)という曲でした。


この曲は、翌'78年にシングルカットされ、日本では本国アメリカ以上にヒットしています。かなり長い期間にわたって、ラジオでも、街中でも、ディスコでも頻繁にかかっていた曲です。


ストリングス系のシンセとピアノのイントロ、その後リズムが先導していき、ファルセット・ボイスでのボーカルが始まる展開です。当時の歌謡曲を想い起こさせるような、抒情的な短調のメロディです。


「Come to see(確かめにおいで), victory in a land called fantasy (ファンタジーという名の大地にある勝利)~」と、歌詞はポジティブですが、旋律は哀愁を帯びていて、どこか切なくもさせる雰囲気です。


さらに、リズムは、当時ディスコで流されていたことが信じられないほどゆったりとしたもので、BPMでいうと88くらいです。


中盤からはコーラスが入ります。クライマックスは、リード・ボーカルの Philip Bailey の魅力的な高音のファルセットといった流れです。


この曲は、レコードを買う前からいつも頭の中でリピートされているくらいに好きな曲でした。そこで、これが入ったLP「ALL 'N ALL」を手にしたわけです。


レコード盤を新品のプレイヤーにのせ、針を落とし、1曲目「SERPENTINE FIRE」(太陽の戦士)から聴き始めました。「FANTASY」とはだいぶ印象の違う曲です。


パーカッションがリードする「アフリカ的ファンク」ともいうべきリズムが前面に出てきます。リーダーの Maurice White が唄うメロディーは明るく、力強いブラスも加わります。


2曲目が、さきほど記した「FANTASY」です。


さらに、アフリカの民俗楽器カリンバ(親指ピアノ)をフィーチャーした間奏曲「IN THE MARKETPLACE」(市のたつ広場)が続きます。


次いで「JUPITER」が始まります。テクニカルで強烈なブラスのラインと、リズム・ギターのカッティングに圧倒される、ファンク的な1曲です。


さらに、ゆったりしたバラード「LOVE'S HOLIDAY」に続いて、A面の最後は「BRAZILIAN RHYME」(ブラジルの余韻)です。 Philip Bailey によるファルセットのスキャットが魅力的な、軽快なリズムの曲です。


なお、この「ブラジルの余韻」も、僕はアルバムを買う前からよく聴いていました。今世紀に入ってリミックスされるなど、DJに愛された曲でもあります。


さらに、B面です。最初の「I'LL WRITE A SONG FOR YOU」(聖なる愛の歌)は、このグループらしからぬ(?)静けさで始まる長調のバラードです。Philip の魅力全開なボーカルが高揚していき、それにつれてサウンド全体も盛り上っていきます。


続く「MAGIC MIND」「RUNNIN'」も、聴き覚えのある曲でした。とりわけ、インスト中心の「RUNNIN'」は、スリリングで疾走感のある演奏に興奮させられる作品です。


さらに、ブラジル音楽界の巨人 Milton Nascimento 作「Ponta de Areia」のインスト・カバーの間奏曲が続き、最後はバラード「BE EVER WONDERFUL」での締めくくりです。


EARTH,WIND & FIRE を特徴づけるのは、Maurice、Philip らのボーカルやコーラス、華やかで力強いブラスや、多彩な打楽器などのインスト・パート、ラテンやアフロなどのエッセンスも採り入れた多彩なリズム、といった粒選りの要素です。このアルバムには、そのすべてが詰まっているといっていいでしょう。


「ALL 'N ALL」以降、彼らはディスコ色を強め、名曲を怒涛のようにヒットチャートに送り出します。一方で、「ALL 'N ALL」以前からのファンク色の強いサウンドも、このアルバムでは健在です。ディスコ的なサウンドとファンク・サウンドが共存し、融合しているところも魅力的な作品です。


EARTH,WIND & FIRE をまったく知らない人に1枚を薦めるなら、僕は躊躇なくこの「ALL 'N ALL」を選びます。



EARTH,WIND & FIRE / ALL 'N ALL(邦題:太陽神)


A1:SERPENTINE FIRE / 邦題:太陽の戦士

A2:FANTASY / 宇宙のファンタジー

A3:IN THE MARKETPLACE(Interlude)/(間奏曲)市のたつ広場

   JUPITER / 銀河の覇者

A4:LOVE'S HOLIDAY / ラブズ・ホリディ

    BRAZILIAN RHYME(Interlude)/(間奏曲)ブラジルの余韻


B1:I'LL WRIGHT A SONG FOR YOU / 聖なる愛の歌

B2:MAGIC MIND / マジック・マインド

B3:RUNNIN' / ランニン’

    BRAZILIAN RHYME(Interlude)/(間奏曲)ブラジルの余韻

B4:BE EVER WONDERFUL / ビー・エバー・ワンダフル



以上の曲名や曲順、曲の区切りは、LPの盤面の表記と、日本語解説の表記に準拠しています。


さらに、以下は、2012年発売のCDの日本語解説に準拠したものです。11までの内容、曲順はLPと同じですが、一部の曲名の表記、曲の区切りが異なります。ボーナストラックとして12~14が加わります。



01:SERPENTINE FIRE / 太陽神

02:FANTASY / 宇宙のファンタジー

03:IN THE MARKETPLACE(Interlude)/ 市のたつ広場(間奏曲)

04:JUPITER / 銀河の覇者

05:LOVE'S HOLIDAY / ラブズ・ホリディ

06:BRAZILIAN RHYME(Interlude "Beijo")/ ブラジルの余韻(ベイジョ)

07:I'LL WRIGHT A SONG FOR YOU / 聖なる愛の歌

08:MAGIC MIND / マジック・マインド

09:RUNNIN' / ランニン

10:BRAZILIAN RHYME(Interlude "Ponta De Areia")/ ブラジルの余韻(ポンタ・ジ・アレイア)

11:BE EVER WONDERFUL / ビー・エヴァー・ワンダフル


Bonus Tracks ~


12:WOULD YOU MIND(Demo Version Of Love's Holiday)

   / ウッド・ユー・マインド(ラヴズ・ホリデー・デモ・ヴァージョン)

13:RUNNIN'(Original Hollywood Mix)

   / ランニン(オリジナル・ハリウッド・ミックス)

14:BRAZILIAN RHYME(Interlude "Beijo")(Recorded Live On Oct.25,1980,At Maracananazinho,Rio De Janeiro,Brazil)

   / ブラジルの余韻(ベイジョ)(ライブ・ヴァージョン)

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