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6月, 2022の投稿を表示しています

コシミハル(koshi miharu)/ BOY SOPRANO ~クラシック、テクノポップ、細野晴臣

コシミハル(越 美晴)の1985年のアルバム「BOY SOPRANO」を僕が購入したのは、クラシックとテクノポップの融合作品として、当時話題になっていたためです。 僕が子どもの頃から好きなクラシックの名曲に、ヴィヴァルディの「四季」があります。この組曲のリズムに、テクノポップと共通するものを僕はその頃感じていました。そのため、クラシックとテクノポップの融合というテーマは、僕にとってとても興味深いものでした。 ちなみに、コシミハルの名前は、かつては koshi miharu など、主にローマ字表記されていました。'89年から「コシミハル」と、カタカナに変えられたようです。 コシミハルといえば、細野晴臣の名前がたびたび一緒に出てきます。同氏との出会いにより、彼女の音楽性は大きく変わったといわれています。その細野晴臣と高橋幸宏が中心となって設立した¥EN(YEN)レーベルから、コシミハルは'83年に「Tutu(チュチュ)」、'84年に「Parallelisme(パラレリズム)」と、2枚のアルバムをリリースしています。さらにそのあと、細野晴臣主宰の Non-Standard レーベルから出したアルバムが「BOY SOPRANO」です。 1曲目「野ばら」は、オーストリアの作曲家フランツ・シューベルトが書いた歌曲です。パイプオルガンのようなシンセサイザーの音のみをバックに、コシミハルがアルバムタイトルどおりのボーイソプラノ的な声で原語(ドイツ語)と日本語の詞を交互に唄います。ここまでは融合というよりも「クラシックそのまま」といった感じですが、すぐに打ち込みのドラムが入ってきます。細かく刻まれたいかにもテクノポップといった感じのビートですが、音色のせいかゆったりとしたメロディーとの違和感はありません。その後は曲の進行に合わせてバックのシンセにもさまざまな音のフレーズが加わっていくという、華やかな展開です。 2曲目「夕べの祈り」も、歌詞やタイトルも含めて僕がイメージするクラシックそのものです。ですが、この曲の作曲は細野晴臣、作詞もポップス系の山上路夫です。最低限の音数による打ち込みのドラムが入った、シンプルで明朗な曲となっています。 3曲目「アヴェ・マリア」も、シューベルト作曲のクラシックです。伸びやかで深い響きのボーカルと、パーカッション的な打ち込みドラム

DJ Spooky That Subliminal Kid / Riddim Warfare ~チープなジャケットに騙されてはいけない

DJ Spooky(=DJ Spooky That Subliminal Kid 〜Paul Dennis Miller=ポール・デニス・ミラーのアーティストネーム)の「Riddim Warfare」のジャケットは、上の写真でご覧のとおりです。'70年代終盤のビデオゲーム画面のようなデザインです。 僕がこのCDを購入したのは1998年です。なので、すでに懐かしさがありました。ただし、レトロ・フューチャー的とか、ダサカッコイイといったポジティブな印象はなく、「チープな…」が正直なところでした。 反面、「中身はいいかも」と思い、買ってみたのです。すると、予想どおりでした。混沌として過激な部分がありながらも、しっかりと構成され、ときに意表を突いてくる、クールなサウンドの連続でした。 1曲目「Pandemonium」は、さまざまな人の声や音楽のサンプリングが細かく編集された曲です。ノンストップで、2曲目「Synchronic Disjecta」に続きます。 すると、こちらはミドルテンポのブレイク・ビーツ(サンプリングしたドラムを細かく切って再構成する手法)と、ハープのような音のアルペジオが核になったサウンドです。レコードのスクラッチノイズも激しく飛び交います。ブラスやシンセサイザーなど、さまざまな音の断片が小さな音量で丁寧に重ねられています。 ターンテーブルとミキサーを楽器のように使い、既存のレコードから新たなビートを創り出す手法を「ターンテーブリズム」、その使い手を「ターンテーブリスト」と呼びます。DJ Spooky は、このアルバムの当時すでにターンテーブリストとして著名な存在でした。実際の曲作りでは、ターンテーブルだけでなく、サンプラーなどの機材も多用していると思われますが、基本的な発想や手法はターンテーブリズム的といえそうです。 続く、3曲目「Object Unknown」では、2曲目(「Synchronic Disjecta」)に比べて速く、激しいブレイク・ビーツが展開します。 もっとも、この当時一世を風靡していたドラムンベースの曲によくあるような、過剰に細分化された複雑すぎるビートではありません。適度に入り組んでいて、四つ打ちのようなスピード感があり、よくグルーブするドラムです。Kool Keith と Sir Menelik のラップ、DJ Spook