スキップしてメイン コンテンツに移動

投稿

11月, 2020の投稿を表示しています

WEATHER REPORT / MR. GONE ~難しくないウェザー・リポート

1978年に発表された「MR. GONE」は、僕が初めて気に入った Weather Report(ウェザー・リポート)のアルバムです。それまでにも数枚彼らのアルバムを聴いてはいたのですが、どこか難しく、ノれない印象がありました。 1曲目「The Pursuit Of The Women With The Feathered Hat」(邦題:貴婦人の追跡)は、シンセサイザーやオルガンなどのエレクトリックな音色が印象的な曲です。少し暗い雰囲気の前奏に続いて、短いフレーズのシークエンス、さらに同じ低音のフレーズが続きます。 ベース・ラインにもシンセサイザーが使われています。パーカッションが細かいリズムを正確に刻んでいきます。この辺り、当時のニュー・ウェーブを彷彿とさせる展開です。 やがて、アドリブかと思うような、さまざまな断片的なメロディーが重なってきます。2台のドラムとベース・ギター、さらに背後には野性的で陽気な男声コーラスも加わります。南国的なイメージのするサウンドです。 2曲目「River People」も、やはりエレクトリックな和音で始まります。中音域と低音のユニゾンによるメロディーに、ヘビーな持続音やシークエンスが交錯します。同じメロディーが何度も繰り返され、そこに即興的で断片的なフレーズが交じる展開です。 この曲のゆったりと腰のすわったドラムは、ベーシストの Jaco Pastorius(ジャコ・パストリアス)が叩いています。彼は、時折短いシャウトのようなボーカルも重ねます。本職のベース・ギターはむしろ控え目です。 僕が初めて聴いた Weather Report のアルバムは、1983年の「Procession」です。カセット・テープで購入しました。 ですが、その後、LPにもCDにも買い替えることはありませんでした。買い替えたくなるほどの魅力を感じなかったのです。 さらに、翌年の「Domino Theory」や、「Procession」以前の作品も何枚か聴いてみました。それでも「難しい音楽だな」との印象は変わりませんでした。 理由は、メロディーにあったのかもしれません。 Weather Report は、キーボードの Josef Zawinul(ジョー・ザヴィヌル)とサックスの Wayne Shorter(ウェイン・ショーター)を核とするグループです。主にこの

Yoshinori Sunahara(砂原良徳)/ Crossover ~テクノだけどビフォー・テクノを感じる

明瞭で短いメロディーの繰り返し。メカニカルな質感のドラム。正確に反復し続けるシークエンス… いかにも「エレクトリック」といった感じのシンセサイザー、効果的に織り込まれる生楽器の音… そんな、テクノ・ポップの特徴的な要素を砂原良徳(すなはらよしのり)のファーストアルバム「Crossover」を聴いたとき、僕は強く感じました。 もっとも、このアルバムは、ジャンルとしてはテクノ・ポップではなく、「テクノ」に位置づけられる作品です。レコード・ノイズやサンプリングも多用された'90年代以降のサウンドには違いありません。 ですが、僕は聴いていて'80年前後のYMOやDEVOの音楽を思い出し、つい懐かしい気分にさせられてしまうのです。 最初の曲からしてそうです。タイトルは「M.F.R.F.M.(MUSIC FOR ROBOT FOR MUSIC)」です。直訳すると「音楽ロボットのための音楽」でしょうか? チリチリとしたノイズに、盆踊りのお囃子かとも思えるようなサンプリングが重なります。ドラムがフェイド・インしてきます。エコーがかかった硬質なフィル・イン。さまざまな音色のシンセのリフが交錯する中に、英語の男声によるセリフ、もしくはアナウンスが流れます。ホルンのような音(サンプリング?)や、アコースティック・ピアノも加わります。最後は、このピアノによる美しい旋律でフェイド・アウトです。 僕にとっては、YMOのファーストアルバム「Yellow Magic Orchestra」の2曲目「Firecracker」での坂本龍一のピアノを連想させられる曲です。「MUSIC FOR ROBOT FOR MUSIC」のタイトルも、とてもよく似合う作品です。 さらに、このアルバムを聴き進めていくと、テクノ・ポップとは違う要素にも気付かされます。南国音楽的なところです。 3曲目「Whirl Pool」は、女声ボーカルやスティール・ドラムの入る曲です。ボーカルは短く細切れで、全体の音はテクノ的です。しかし、なぜか僕の瞼にはハワイの風景が浮かんで来ます。 4曲目「Silver Ripples」でも、テクノ・サウンドの中、エレクトリック・ギターやパーカッションが南洋的な雰囲気を醸し出しています。冒頭から鳴るシークエンス音も、僕には美しい南国の鳥の声に聴こえます。 一方、7曲目「Muddy W