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5月, 2020の投稿を表示しています

Machine Drum(Travis Stewart)/ ROOM(S) ~心地よくスピードに乗る

テクノを初めて聴いたとき、感じたのはテンポの速さでした。 33回転=1分間に33回転半回るレコードが、1周する間に4拍を打つとして、BPMは134です。テクノはこのくらいのテンポが普通です。 120台だと、随分ゆっくりとした曲に感じてしまいます。 一昨年、映画館で、スピルバーグ監督の「レディー・プレイヤー1」を観ていたところ、劇中に Bee Gees のディスコ・クラシック「Stayin’  Alive」が流れていました。 「あれ、こんなに遅かったっけ」と、そのとき感じました。 そこで、帰宅してから Bee Gees のベスト盤をCDプレイヤーにかけてみると、BPMは109でした。 '78年当時のディスコ音楽といえば、このくらいが、遅すぎも速すぎもしない標準的なテンポだったと思われます。 テクノにすっかり慣れた現在の耳で聴いてみて、遅く感じてしまったのも、当然といえそうです。 Machine Drum(マシーンドラム)~Travis Stewart(トラヴィス・スチュアート)のアーティスト・ネーム~ のアルバム「ROOM(S)」では、標準的なテクノよりもさらに速いビートの曲が連続します。 1曲目「She Died There」は、快速で連打されるバス・ドラムと、レコードのノイズ音で始まります。そこに、エフェクトをかけたボイス・サンプルがフェード・インしてきます。カタカタと細かく刻むパーカッションも加わります。 BPMは142です。ですが、数字ほどにセカセカした感じはありません。聴いている方の身体が、2拍分を1拍に感じているからかもしれません。 速い以上に、「She Died There」は、サウンドの新鮮さが印象的な曲です。ただし、発売された2011年当時を振り返っても、特に斬新な手法が用いられていたということでもありません。それでも、どこか未来的です。 BPMに絡めて、紹介を続けます。 2曲目の「Now U Know Tha Deal 4 Real」は145です。続く「Sacred Frequency」では76に下がります。大きな差ですが、後者ではあまり遅さを感じません。 ゆったりとした曲ですが、それよりも、ドラムの力強いビートが印象的です。 そこに、澄んだ音のシンセ、パーカッシブなシークエンス音、ミニマルなメロディーのボーカルが重なります。聴いていて、陶

Youssou N'Dour / SET ~僕の「アフリカ」を広げてくれたアルバム

僕がアフリカのミュージシャンによる音楽を聴くようになったきっかけは、King Sunny Adé との出会いでした。'83年のことでした。 先端的なスタジオ・テクノロジーと、土俗的で野性的なビートの融合に、大いに魅力を感じました。 そこに存在する民族音楽的な要素に、僕はいたく取り憑かれてしまったわけです。 そのため、以降も、アフリカの音楽に対しては、僕はつねに現地の「土」の匂いを期待し続けていました。 ところが、やがてそれが突き崩されました。 突き崩したのは、セネガルのアーティスト Youssou N'Dour です。'90年にリリースされたアルバム「SET」を聴いたことによるものです。 「SET」は、いわゆるアフリカ的な要素を多分に持ちながらも、ロックやソウルのチャートに並んでいてもほとんど違和感のないアルバムでした。いわば、アフリカの大地に立ちつつも、アフリカ離れした作品です。 もっとも、僕はそのことに最初は気づかず、 「複雑で躍動的、怒涛のように押し寄せるリズム」 「張り詰め、突き刺さってくるようなボーカル。メロディーの美しさ」 「重厚で炸裂するようなブラスの加わったアレンジ」 「曲ごとのサウンドの多様さ」 これらにただただ魅了され、感動を覚えただけでした。 その後、しばらくしてから、この作品の華麗で繊細な(?)アフリカ離れの様子にハッと気づかされたという次第です。 1曲目は「Set」です。イントロからいきなりそれが感じられました。キーボードとギターによる軽快なリフから入るところなど、セネガル音楽をベースにしながらも、まさにロック的です。 Youssou の張りのあるボーカルに各楽器が追随します。一気に盛り上がります。 セネガルの伝統的な打楽器「タマ」の音も聴こえます。複雑なパターンを躍動的に叩き出しています。 ちなみに、タマは、やや小ぶりのトーキング・ドラム(肩から下げ、脇を締めることで音程を変えられる打楽器)のことをいいます。Youssou の作品には欠かせない楽器で、ほとんどの曲で使われています。「Set」でも、タマは主役級の活躍ぶりを見せています。 一方で、この作品には、海を越えた世界のサウンドもふんだんに取り込まれています。 たとえば、カリプソの存在