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9月, 2019の投稿を表示しています

SANTANA / CARAVANSERAI ~SANTANAはこれで最後?

SANTANA のアルバム「Caravanserai」は、いきなり虫の音で始まります。 ノイズが目立たないので、野外で虫の声を録音した感じにも聴こえない。でもアルバム発売の1972年当時の電子機器では、こんな音は出ないはず。楽器の音をエフェクトで変調させているのかな?などと考えているうちに、静かにSAXが入ってきます。 CDの解説には「サンタナは『前世は日本人』と発言していて、SAXも尺八のようだ」とありますが、たしかにそんな雰囲気です。 「尺八サックス」に続き、アコースティック・ベース、エレピ、ドラムが加わり、ギターがゆったりとコードを弾きはじめます。 1曲目がフェード・アウトすると同時に2曲目がフェードイン。ゆっくりとしたややルーズなリズムの上で、パーカッションと、SANTANA 独特の太い音色で長く尾を引くリード・ギターが自由に跳ねまわります。 3曲目は一転してくっきりとしたリズム。SANTANAのギターだけでなく、ファンク的なリズム・ギターやオルガン、多数のパーカッションの躍動が目立ちます。 4曲目に入ってはじめて歌が入りますが、アクセント的に配置された感じで短め。インスト演奏のほうが耳に残ります。 やや静かな5曲目に続く6曲目。前奏に引き続き、高音の男性コーラスとともに、カスタネットの音が入ってきます。この音がとりわけ印象的です。 そして、ファルセットを交えた男性ヴォーカルも、オルガンのソロも、パーカッションをはじめとした楽器演奏も、もちろん SANTANA のリード・ギターも、高揚感にあふれて情熱的。A面の最後まで怒涛のように一気になだれこみます。 B面は、テープの逆回転によるエレピやマリンバの音ではじまり、ブラス・オーケストラの加わった9分におよぶ壮大な曲で終わります。 SANTANAの音楽をはじめて聴いたのは、1981年の「LIVE UNDER THE SKY」のテレビ中継でした。Herbie Hancock との共演で、SANTANAの「Europe」と Herbie の「Saturday Night」が放送されました。 録画してよく視聴していましたが、当時の僕はロック系のギターが好きではなく( Stevie Wonder / Talking Book の項参照 )、Herbie や、SANTAN

JEFF MILLS Presents MIX-UP Vol.2 LIMITED EDITION VINKL ~強靭でファンキー、しなやか

Jeff Mills の音楽との初めての出会いは、田中フミヤのMIX-CDでした。( MiX-UP vol.4の項参照 ) 全34曲のうちの8曲が、Jeff Mills の曲や彼がリミックスした曲。クライマックス部分に集中的に配置され、田中フミヤの素晴らしいテクニックとあいまって、34曲の中でも特に魅力的に響いていました。 その後、ライブで Jeff Mills を体験する機会がありました。1998年の夏、彼が来日してテクノ系のイベントに出演したのです。 「90秒ごとにレコードをかけ替える」といわれる超絶的DJテクニックだけでなく、音楽に対するストイックな姿勢、哲学的な発言などから、この当時、彼はすでに半ば伝説化された存在でした。そのDJプレイを一度は生で見てみようと思ったのです。 もちろん、彼はこのイベントのトリです。最後の2時間弱、たっぷり堪能しました。広大な会場のあちこちに設置されたTVモニターで見たのですが、音がなくても、その動きだけで楽しめるほどの驚愕の映像でした。 レコードを取り出してターンテーブルの上に置く、ピッチ・コントローラーを操作してテンポを合わせる、レコードをこすって「頭出し」する、イコライザーやエフェクターを操作して音質やバランスを変える… そのすべての動きが、とにかく速い。「90秒ごとに1枚」よりも速く感じました。 一旦ターンテーブルに置いてテンポなどを調整したレコードを「コレ、やめとこう」といった感じでレコード・ボックスに戻し、他のレコードに替えることもたびたびありました。その場で即興的にレコードを変更しているようです。まるでジャズの即興演奏のようでした。 音とパフォーマンスに圧倒され、ここちよく踊らされる。まさに「Jeff Mills 体験」というべきものでした。 でも、この体験のあとになっても、Jeff Mills の音楽を自室で好んで聴くようになったわけではありません。 Jeff Mills が主に作っていた曲は「ミニマル・テクノ」と呼ばれるものの典型です。音色やリズム自体は大変魅力的ですが、メロディーは断片的で、目立った展開の少ない曲です。 MIX-CDやクラブで「体験」するのには適していますが、一つ一つの曲を単独で聴くと、単調な印象が目立ち、魅力が半減するように思ったのです。

細野晴臣 / S-F-X ~圧倒されっぱなし

細野晴臣の1984年末の作品「S-F-X」ほど、発売が待ち遠しく、期待していたアルバムはありませんでした。そして実際に聴いてみると、期待を裏切らないどころか、それをはるかに超える音楽でした。 ヴォーカルのサンプリングとドラムの音でフェード・イン。ディスコ系の“4つ打ち”と、当時のヒップ・ホップの“バスドラ連打”を組み合わせたようなリズムのドラム。太く、シンプルで、跳ねるようなベースライン。 強烈なリズムの上に、パーカッションやシンセ、スクラッチ・ノイズ、サンプリングされたヴォイスなどが、次々に重なっていきます。 細野のリード・ヴォーカルは独特な音処理がされ、電気的な響きのする音に仕上げられています。背後には、ラップとも語りともつかぬ、男声ヴォーカルが入ります。 曲の最後は、これら全ての音をミックスした、混沌とした感じで終わります。 この1曲目「BODY SNATCHERS」から、圧倒されっぱなしでした。 僕だけではありません。かのAfrika Bambaataa( Planet Rock の項参照)はこの曲を聴いて「Crazy!」と絶賛し、オーストラリアのある学生は「Over the Top!」(やり過ぎだ!)と、その印象を表現したそうです。 2曲目の「ANDROGENA」も、予想外の不思議なサウンドです。 打ち込みの打楽器とアコースティック・ピアノが、トラックの基本。ベース・ラインもピアノで奏でられます。 時々、ブラスのようなシンセの音も入り、どこかスウィング・ジャズを思わせるサウンド。それにのっかる宙に浮いたようなメロディ。歌詞にある「月」のイメージにピッタリな印象です。 B面1曲目「STRANGE LOVE」は、ひしゃげた感じの変わったリズム。後に見たアルバム評では「ファンクとアフリカのリズムの融合」ということのようですが、確かにそんな感じがします。 アルバムの最後は、背景に流れるシンセの音の上でピアノがゆっくりと静かに奏でられる、アンビエント作品で終わります。 僕が細野晴臣の音楽を聴いたのは、YMOが最初です。 聴き始めた当初、「東風」や「TECHNOPOLIS」など、坂本龍一の曲が好きでしたが、やがて「SIMOON」や「ABSOLUTE EGO DANCE」「ラップ現象」など、細野晴臣の曲に魅力を