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Brecker Brothers / The Brecker Bros. ~最高レベルのアンサンブルとソロ・プレイ


Brecker Brothers(ブレッカー・ブラザーズ)のファーストアルバム「The Brecker Bros.」には、とても豪華なメンバーが参加しています。


まずは、リーダーの Randy Brecker です。彼の演奏を初めて聴いたのは、Jaco Pastorius Big Band の'82年の来日ライブの際のTV中継ででした。


その際は、トランペットのマウスピースの近くにコードを入れ、そこからも音をとり、エフェクトをかけていたようです。さらには、ミュートを取り付けるなどして吹き出される独特の音に、とても興味をひかれました。


なお、「The Brecker Bros.」のジャケット裏面にも「Electric Trumpet」と、クレジットが入っています。


1曲目の「Some Skunk Funk」から、早速、彼独特のエレクトリックなソロを堪能できます。フレージングはどちらかというと無調で、飛び跳ねるような感じです。


Randy の弟でテナー・サックスの Michael Brecker は、Brecker Brothers 以外でも、名うてのミュージシャン達と Steps(後に Steps Ahead )を結成、活躍していました。ジャズ雑誌などでは、兄の Randy よりも頻繁にその名を目にしたものです。


彼は、渡辺香津美の'83年のアルバム「Mobo」にも、ゲスト参加しています。John Coltrane 直系といわれた、テクニカルなフレーズが特徴的です。


アルト・サックスの David Sanborn については、このアルバム以前に、彼のリーダー・アルバムを何枚か聴いていました。魅力は何といっても音色です。メタリックでありつつ、人間臭さも感じます。一度聴けば忘れられない音です。ちなみに、6曲目「Rocks」では、この David Sanborn と Michael Brecker のソロの掛け合いを聴くことができます。


ドラムスの Harvey Mason は、Herbie Hancock の'73年のアルバム「Head Hunters」にも参加しています。この中の1曲「Sly」での、快速でありつつも走らず、タイトで腰が座ったような演奏に僕は魅了されました。


ちなみに、音楽評論家の熊谷美広は、対談の中でこの「Rocks」に関連し、「この曲と、ハービー・ハンコックのアルバムに入っている『スライ』という曲が私にとってのメイソンの神プレイです」と、賞賛しています。 


パーカッションの Ralph MacDonald は、叩き過ぎず、少ない音で最大限の効果を上げ、サウンドに深みを与える「名人」です。渡辺貞夫の'80年のライブアルバム「How's Everything」の1曲目で、ブレイクの間に彼が「ピューン」とたった一音、エレクトリック・パーカッションを鳴らした瞬間、僕は鳥肌が立ちました。


以上、このような超一流プレイヤー達のアドリブ合戦が、このアルバムで聴けるのではと思い、「The Brecker Bros.」聴いてみたのです。遅ればせながら'90年くらいの頃です。


結果、期待どおりアドリブも堪能できたのですが、それ以上に圧倒されたのは、グループとしてのアンサンブルの冴えでした。


1曲目「Some Skunk Funk」から、それが際立っています。


この曲では、とても複雑に入り組んだメロディーが、3本の管楽器による金属的な分厚いアンサンブルで演奏されます。いわば「ヘビー・メタル・フュージョン」といったサウンドです。ちなみに、彼らの'78年のライブ・アルバムのタイトルは「Heavy Metal Be-Bop」です。


なお、分厚いとはいっても、この「Some Skunk Funk」に重苦しさはまったくありません。複雑であるにも関わらず、つい口ずさみたくなってしまうようなメロディーなのです。


これは、僕だけの印象ではないようです。あるスタジオに集った、ジャンルを超えたミュージシャンたちが、たまたま Brecker Brothers の話で盛り上がり、最後は全員の口三味線で「Some Skunk Funk」を合奏したというエピソードをどこかで読んだことがあります。


そんな1曲目を含め、9曲中8曲が Randy Brecker の作曲・アレンジです。2曲目「Sponge」以降も、複雑なメロディーや、目まぐるしい展開の曲が続きます。メロディが終わると、Harvey Mason ら、リズム隊によるアンサンブルがフロント楽器のソロを盛り上げていきます。1曲目同様、どれも口ずさみたくなるような曲ばかりです。


アルバム全曲を通して、リズムは「ソウル的ダンス・ビート」といった風で、メロディー同様、ノリは軽快です。


「The Brecker Bros.」は、最高レベルのアンサンブルと、ソロ・プレイが楽しめる、とても贅沢なアルバムです。



Brecker Brothers / The Brecker Bros.(1975年)


1:Some Skunk Funk

2:Sponge

3:A Creature of Many Faces

4:Twilight

5:Sneakin’ Up Behind You

6:Rocks

7:Levitate

8:Oh My Stars

9:D.B.B


LPでは1~4曲目がA面、5~9曲目がB面です。

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