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WEATHER REPORT / MR. GONE ~難しくないウェザー・リポート


1978年に発表された「MR. GONE」は、僕が初めて気に入った Weather Report(ウェザー・リポート)のアルバムです。それまでにも数枚彼らのアルバムを聴いてはいたのですが、どこか難しく、ノれない印象がありました。


1曲目「The Pursuit Of The Women With The Feathered Hat」(邦題:貴婦人の追跡)は、シンセサイザーやオルガンなどのエレクトリックな音色が印象的な曲です。少し暗い雰囲気の前奏に続いて、短いフレーズのシークエンス、さらに同じ低音のフレーズが続きます。


ベース・ラインにもシンセサイザーが使われています。パーカッションが細かいリズムを正確に刻んでいきます。この辺り、当時のニュー・ウェーブを彷彿とさせる展開です。


やがて、アドリブかと思うような、さまざまな断片的なメロディーが重なってきます。2台のドラムとベース・ギター、さらに背後には野性的で陽気な男声コーラスも加わります。南国的なイメージのするサウンドです。


2曲目「River People」も、やはりエレクトリックな和音で始まります。中音域と低音のユニゾンによるメロディーに、ヘビーな持続音やシークエンスが交錯します。同じメロディーが何度も繰り返され、そこに即興的で断片的なフレーズが交じる展開です。


この曲のゆったりと腰のすわったドラムは、ベーシストの Jaco Pastorius(ジャコ・パストリアス)が叩いています。彼は、時折短いシャウトのようなボーカルも重ねます。本職のベース・ギターはむしろ控え目です。


僕が初めて聴いた Weather Report のアルバムは、1983年の「Procession」です。カセット・テープで購入しました。


ですが、その後、LPにもCDにも買い替えることはありませんでした。買い替えたくなるほどの魅力を感じなかったのです。


さらに、翌年の「Domino Theory」や、「Procession」以前の作品も何枚か聴いてみました。それでも「難しい音楽だな」との印象は変わりませんでした。


理由は、メロディーにあったのかもしれません。


Weather Report は、キーボードの Josef Zawinul(ジョー・ザヴィヌル)とサックスの Wayne Shorter(ウェイン・ショーター)を核とするグループです。主にこの2人が作曲しています。彼らのつくり出すメロディーには、複雑で長いものが多いのです。


特に Josef Zawinul の弾くフレーズは、どこまでがメロディーでどこからがアドリブ=インプロビゼーションなのか、判らないこともありました。


そんな、難解な印象に引っ張られたせいか、音色もサウンド全体も、僕にはミステリアスなものに聴こえていました。


その点、「MR. GONE」でも、複雑なメロディーは目立ちます。ですが、冒頭の2曲についていえば、同じメロディーが何回も繰り返されたり、似たような短めのフレーズが連続するような、わかりやすい構成です。


賑やかなパーカッションや、さきほどふれた陽気な男声コーラスなども相まって、冒頭から惹きつけられました。


もっとも、3曲目「The Elders」や、5曲目(B面1曲目)「Mr. Gone」は、長くて複雑な、典型的な Weather Report のメロディーです。どちらも Josef Zawinul の作曲です。


それでも、1、2曲目で僕の耳が作品に「入り込んだ」ためか、それまで聴いたアルバムのような印象とはなりませんでした。どこかユーモラスで、とぼけた響きに聴こえる部分さえありました。


6曲目「Punk Jazz」は、冒頭、ベースの Jaco Pastorius とドラムの Tony Williams(トニー・ウィリアムス)の即興的な演奏で始まります。中盤ではキーボードが同じようなフレーズを繰り返すところに、Wayne Shorter や Jaco が断片的なソロを重ねます。体がゆったりと揺れ出す感じの曲です。


Jaco は、この「Punk Jazz」と「River People」の作曲とアレンジを担当しています。「Co-Producer」とクレジットされています。「MR. GONE」は、Wayne Shorter 以上に Jaco の存在感が大きいアルバムといえるでしょう。


なお、このアルバムを聴く以前から、僕は Jaco の作品が好きでした。そのことも、僕が「MR. GONE」に惹きつけられた理由でしょう。


最後の「And Then」では、Jaco のベースが奏でる伸びやかなメロディーが冒頭から曲をリードします。最後には Earth Wind & Fire(アース・ウィンド・アンド・ファイアー)のリーダー、Maurice White(モーリス・ホワイト)の唄が加わります。締めくくりにふさわしい1曲です。



WEATHER REPORT / MR. GONE(1978年)


A1:The Pursuit Of The Woman With The Feathered Hat

A2:River People

A3:Young And Fine

A4:The Elders


B1:Mr. Gone

B2:Punk Jazz

B3:Pinocchio

B4:And Then

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