僕がテクノなどのClub系音楽を聴き始めた1996年頃、それらの音楽の主流フォーマットは、アナログ・レコードでした。よく通っていたCISCOレコードのテクノ店もそうです。
でも当時CDのみを聴いていた僕は、店の一部に置かれてたCDを物色していたのです。(FUMIYA TANAKA:MIX-UP Vol.4 の項参照)
持っていたレコード・プレーヤーは既に回転を伝えるベルトが切れて動きませんでした。買い替えるとなると、ちゃんとしたものはCDプレーヤーより高そう。
レコード・プレーヤーは調整するのが大変。針もよく選ぶ必要がある。すぐに針にホコリがたまる。何回も同じレコードを聴いていると、やがてパチパチと静電気が出る。
レコードの片面は長くても30分弱。例えば50分~70分のアルバム(当時はそのぐらいの長さが普通でした)だと、レコードでは2枚か3枚組になり、表面・裏面に加え、レコードを交換することになり面倒・・・
というあたりが、レコードにしなかった理由です。
でも、テクノ系のMIX-CDを聴きながら、その中に入っている曲を聴いてみたいと思うようになりました。そういう曲のほとんどは、レコードでしか聴けません。
リリースされる作品の絶対数も、CDよりずっと多い。安いし(一枚1000円強)、音もいいらしい。
ある時思い切って、聴きたかったレコードを先に買ってしまいました。2000年の頃、CISCO・テクノ店で、田中フミヤとJeff Millsのレコードを一枚ずつだった、と思います。
そしてその足で、CISCOの向かい側にある「樽屋」というお店でレコード・プレーヤーを購入。「調整の仕方がよくわからない」と言ったら、お店の人(たぶん社長さんだと思います)が色々教えてくれた上で、ワープロ打ちの一枚のマニュアルを渡されました。
数日後、レコード・プレーヤーが届きました。手こずりながらもお店の人の助言とマニュアルに沿って調整します。
用意が終わり、ドキドキしながらレコードを置きました。
最初は比較のために、CDとレコードの両方を持っている作品(Kid-Creole & the CoconutsのLPだったと思います)を聴き比べてみました。
しろうとの耳にも、CDに比較して音が柔らかくて深いことが分かります。あえて、ハードなギターの音も聴いてみましたが、耳に痛くなくて聴いていて疲れない。
上記の2枚もすぐに聴いたのは勿論です。
その後は、しまい込んでいた(幸いにもレコードはほとんど処分していませんでした)LPレコードを聴くのと並行して、昔のレコードの中古、テクノの新作などのレコードを、漁り始めました。
レコードの試聴も体験しました。若いクラブ音楽ファンやDJらしき人に交じって、お店でレコード・プレーヤーを操作するのは、最初は勇気が要りましたが・・・。
僕が一番レコードを買っていた時期、ジャケットに惹かれて買った一枚が、Lucianoの「Yamoré Remix」です。
これを購入した2006年頃、実は狭い意味での「テクノ」に若干飽き気味でした。「四つ打ち」のリズムで展開が少ない形式は、どうしても単調に感じ易い。好きなアーティトの作品でも、たくさん聴くうちに、どうしても飽きが来やすい。
なので、他のクラブ系=ブレーク・ビーツなどのインストルメンタル・ヒップホップ系やダブ、ダブ・ステップ、エレクトロ、と呼ばれる作品を購入することが増えていました。
そんな時期、再びテクノに引き戻されるきっかけになった作品です。
A面はSalif Keitaの曲のリミックス。この原曲は知りませんが、聴いてすぐ彼とわかる特徴的な声とコラらしき弦楽器の響き、女声コーラスが、Technoらしい淡々としたサウンドとリズムの中に絶妙に織り込まれ、メロディアスに仕上がっています。
B面は唸るような低音とボーカルが織り込まれたビートが反復する、典型的なテクノですが、即興的に乗っかるハーモニカと、すこしづつ変化するパーカッションの音のためか、12分近い時間、飽きることがありません。
このレコードは、Luciano自身が主催するCadenza-Recordからでています。
このレーベルの作品は、どのアーティストのものも、テクノでありながらメロディーを感じさせ、音色も特徴的。基本、両面一曲づつの構成ですが、曲が長く、じっくり聴いた感じになります。ジャケットも音のイメージどおりカラフルでスタイリッシュです。
以降、Cadenza-Recordの作品を中心に、テクノを再び聴き始めました。
Luciano / Yamoré Remix(2006年)
A:Luciano / Yamoré Remix(Original by Salif Keita)
B:Pepe Bombilla feat Daniel Aimé / Harmonics Crashes
*Pepe Bombillaは、Lucianoの別名義です。