スキップしてメイン コンテンツに移動

投稿

6月, 2019の投稿を表示しています

AFRIKA BAMBAATAA & SOULSONIC FORCE / PLANET ROCK ~いかがわしい(?)名作

バイ・ビーポー バイ・ビーポー デヨゲフォゲ~ Afrika Bambaataa(アフリカ・バンバータ) & Soulsonic Force の「Planet Rock」は、僕の耳にはこんな風に聴こえるボーカルから始まります。 なお、この部分はのちに購入したオムニバスCDに入っていた歌詞の記載では、 Body people Body people They gonna get funky と、なっています。 もっとも、そのあとには「.......」と、聴き取れなかったと思われる記述もあるくらいなので、正確なものかは分かりません。 それにしても、なぜ「Africa」ではなく「Afrika」なのか。 「A」がたくさん並んでいる奇妙な名前には意味があるのか。(のちに調べたところ、アフリカのズールー族の首長の名前に倣ったものということです) 「魂の音波軍団」(Soulsonic Force)、「惑星ロック」(Planet Rock)… 「MUSIC BY PLANET PATROL」「POST-ROCK MANIFESTO」… 疑問とともに、何やらいかがわしさすら漂うジャケットだなと、当時は思ったものです。 A面「Planet Rock」は、上記のようなボーカルから始まり、打ち込みのドラムとパーカッションがそれに続きます。 オーケストラ・ヒット(サンプリングされたオーケストラの音を短く鳴らす手法)が加わり、ラップが始まります。 やがて、メインのメロディーが入ってきます。 ただしこのメロディー、発売当時から、テクノの元祖 Kraftwerk(クラフト・ワーク)による1977年のアルバム・タイトル曲「ヨーロッパ特急」のパクリと言われていて、実際、訴訟沙汰になりかけたとのこと。 あとで僕も「ヨーロッパ特急」を聴いてみましたが、メロディーやシンセの音色は、たしかにそう言われてもやむをえないほど似ていました。 しかも、「Planet Rock」は、リズム・パターンも同じクラフト・ワークの「ナンバーズ」をパクっています。 すごいことになっていますが、ともあれ、「ヨーロッパ特急」や「ナンバーズ」よりも、「Planet Rock」の方が、僕にははるかにノれる感じがします。 ほかに、この曲には「夕

King Sunny Adé and his African Beats / Synchro System ~クールでテクニカルなアフリカ音楽

1982年か83年のある日、音楽に詳しい友人からこんな話を聞きました。 「これからは、第三世界の音楽が来るよ」 当時、その名も「Third World」という名前のレゲエ・バンドがブレイクしていたので僕はそれをすぐに連想しました。が、その友人は「特にアフリカだね!」と続けたのです。 アフリカだって?そのときは半信半疑だったのですが、しばらくして「Jazz Life」や「ADLIB」など、当時よく立ち読みしていたフュージョン系の雑誌で、ナイジェリアのKing Sunny Adéの名前をたびたび目にするようになりました。 ニューヨークの巨大ディスコ「リッツ」で大編成のバンドで夜通し演奏したこと、とか、トーキング・ドラムという独特の楽器のこと、スライド・ギターの使われ方、などに関する記事です。 そのうちに、FMラジオで彼の新しいアルバム「Synchro System」のうちの何曲かが放送されることを知り、聴いてみました。 アルバムの1曲目、「Synchro Feelings」。 一体いくつ鳴っているか判らないほどの多数のパーカッションと、3つ4つは鳴っていそうなリズム・ギターが、それぞれに違ったパターンを延々繰り返し、シンクロする。ポリ・リズム、という形式です。 80年代初め、ドラム・マシーンを使って、複雑なパターンを繰り返すリズムが普通になっていたこともあり、とても時代にマッチした音に聴こえました。実際、この曲と他の何曲かで、Linn-Drumなどのドラム・マシーンが使われているようです。 その上に、ときおりあらわれるシンセの音。スライド・ギターの不思議な音色のソロ。 でもこのあたりは、事前情報である程度想像していたことでした。 雑誌などの文字情報で知識はあったものの、聴いてみるまで分からなった「音」がありました。 一つはトーキング・ドラム。日本の鼓を長くしたような形をしていて、先の曲がったスティックで叩き、脇に挟んで、締め付ける力を調整することで音程を変える――これが事前の情報。 実際のアルバムでは、低音に使われています。モコモコしているのにクリアに聴きとれる、という不思議な音。音程が変わるので、まるでベースラインのようにバンドをリードしています。 そして、サイケデリックと言ってもいいような印象を与える、独特な響きです。 前

Monsoon / Third Eye ~インド風ニューウェイブ

1980年代、「ワールド・ミュージック」が流行していた頃に、インドのポップ・ミュージック=「バングラ・ビート」というジャンルがありました。 このアルバム、Monsoonの「Third Eye」も、インド系イギリス人二世Sheila Chandraがボーカルで、タブラやシタールなど伝統的なインドの楽器と、インドの音階を使った音楽です。 でも、僕は「バングラ・ビート」でも「ワールド・ミュージック」でもなく、「インド風のニュー・ウェイブ」というべき音楽だと思っています。 アルバムのハイライトは何といっても、B面1曲目(CDは6曲目)「Ever So Lonely」でしょう。 音合わせのように奏ではじめるシタールと、インド音階の単音のアコースティック・ピアノ、Sheila Chandraのボーカルが、静かに入って来るイントロ。そこから、音楽が華やかに展開しはじめます。 タブラを初めとした多種類の打楽器。音処理が施されたスネアドラム。シタールやピアノの鋭い響き。 中盤からは、延々同じパターンが続き、多数の音が織り込まれるダブ的な展開。 タタン・タン・タタンとインド風リズムを繰り返す高音のゴング、ベースラインのように繰り返す、口琴による(?)男声の低音も加わります。そして、ボーカルは「Ever so lonely」というフレーズを繰り返してゆき、フェード・アウトで終わります。 ほかも、魅力的な曲が揃っています。 アルバムの幕開け「Wings Of The Dawn」の、ボーカルと高音の金属パーカション、 ガムラン音楽で使う鉄琴のような音と、アコースティック・ギターの響きが心地よい「Eyes」、 打ち込みと思われるハンド・クラップ音がリードする軽快な「Shakti」、 フルートによる抒情的なインスト曲「Kashmir」… メロディーも歌詞も、繰返しが多いため、ボーカルも「音」として楽しめる感じがあります。 エコーはかなり強いのですが、一つ一つの音がクリアに聴き分けられ、どこか乾いて爽快な感じがします。 多種の楽器と音が重ねられていても、うるさい感じがなく、打ち消しあうこともなく響きあいます。 コンピューターによる打ち込みは、ほとんど目立ちませんが、これらの効果的な音のエフェクトとミックスや編集のテクニックが「ニューウェイブ」を感じさ

Milton Nascimento / Minas ~幸せな気持ちになる音と難解な歌詞の意味

爽快、牧歌的、華麗、優美、幽玄、力強い、意表を突く、前衛的、開放的、突き抜けるような、透き通るような… これら全ての言葉が当てはまりそうで、また、ぴったりする言葉がない。 あえて一言でいうならば「幸せな気持ち」(いわゆる「ハイ」な気分とは違います)になる一枚、とでも表現するしかありません。 そういう作品が、Milton Nascimentoの「Minas」です。 子供たちのコーラス、Miltonのファルセット・ヴォイスとギターから、アルバムは始まります。 バス・ドラムとタンバリン、リズム楽器のように奏でるサックスが印象的な2曲目、 Miltonが野太い低音を響かせる3曲目、 後にブラジルの伝説的歌手、故Elis Reginaがカバーした独特な5拍子のリズムの4曲目と続き、 A面最後は、力強いオーケストラ・サウンド。この曲の最後には“鳥肌もの”の“仕掛け”があります。 B面も前衛的な曲、ロックとクラシックが融合したような曲など、様々な音が続きます。 B面1曲目「Ponta de Areia」は、Elis Reginaが、そして The Boomが日本語でカバー している有名曲。 5曲目「Paula e Bebeto」は、Milton同様にブラジル音楽界の巨人的存在、Caetano Velosoとの共作の軽快な曲。 CaetanoやRonaldo Bastosら共作者、Fernando Brantによる歌詞、Wagner Tisoのアレンジ。 多くの仲間たちと作り上げた音楽が、「ブラジルの声」とも讃えられるMiltonの唄声を、さらに美しく響かせています。 Milton Nascimentoの名前を始めて知ったのは、1983年の雑誌「Jazz Life」の別冊の記事でした。 「ブラジル音楽界では、Miles Davis(Stevie Wonderだったかもしれません)とQuincy Jonesを合わせたような存在」 「アルバムなら『Milton』か『Minas』、Wayne Shorterの『Native Dancer』がよい」 と書いてありました。でも、レコード屋のMilton Nascimentoのコーナーを見ても、「Minas」も「Milton」もない。そこで、Wayne Shorterの「Native Dance

LAUREL HALO / CHANCE OF RAIN ~宅録女子の躍進

エレピの音から入る短い1曲目に続き、2曲目はベースだけが固定されていて、ドラム、シンセ、パーカッションの断片的なフレーズが飛び交う、複雑でセカセカさせるくらいの曲調。 3曲目は一転して、ドッシリ、ユッタリしたビートが淡々と続く展開。 4曲目は再び速めのビートですが、様々なパターンが入れ替わり立ち替わり、あらわれては消えてゆく、典型的なテクノ的展開。 B面の1曲目はストリングスや管楽器が主体の短い曲。2曲目以降は再びテクノ的な曲続き、最後はピアノの短い曲で終わります。 1つ1つの曲は、テクノの基本となるミニマルな要素で構成され、ボーカルや楽器のソロもありません。 しかし、様々なパターンやフレーズを巧みに配置し組み合わせて構成されていて、曲ごとにリズムやサウンドも異なり、単調な感じはありません。 また、全体をとおして特徴的なのは、音の質感です。当時のEDM系などのクリアな音とは正反対に、少しくぐもっていてザラザラした感じで、新鮮に聴こえました。 ところで、この作品「CHANCE Of RAIN」は女性アーティスト Laurel Halo(ローレル・ヘイロー)が、クレジットをみる限り一人で創った作品です。 いつの頃からか、音楽サイトやCDのライナー・ノーツなどで「宅録女子」という言葉を目にするようになりました。 正式な定義(?)は目にしたことはありませんが、自宅で安価な汎用機材を使い、一人で曲をつくりあげる女性アーティストのことだと思われます。彼女はその典型の一人でしょう。 しかし、この作品から「女性らしさ」は全く感じられません。 同じHyper Dubというレーベルからは、Ikonikaという「宅録女子」の作品も出ていますが、そのサウンドも女性らしさを感じさせるものではありません。 そして、それぞれ、とても個性的なサウンドです。 Ikonikaの場合、CDやレコードに顔写真が載っていなかったので、長い間女性と分からずに聴いていて、時々出てくる本人のボーカルも「ゲスト・シンガーの声だろう」と思っていたくらいです。 メンバーを集めてバンドを作る必要がなく、スタジオという共用の空間に入る時間も少ない「宅録」というスタイルは、性別という社会的な属性をアーティスト自身が意識させられることから自由なため、個人がそのまま強く表に出る。 女