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6月, 2021の投稿を表示しています

BURIAL / Street Halo / Kindred ~とにかく暗~い中の飽きない魅力

「とにかく暗い…」 それが、BURIAL(ブリアル)(William Bevan:ウィリアム・ビヴァン)の「Street Halo / Kindred」を聴いた第一印象です。 まず、目立つのは、意図的に加えられた、チリチリ、パチパチと鳴るノイズです。聴き込んだレコードが発する静電気の音です。 これは、'80年代からヒップ・ホップなどのクラブ系トラックで導入されている手法ですが、これほど全面的に使われているアルバムは初めてでした。 シンセなどと同様、アクセントや装飾ではなく、サウンドの重要な要素になっています。ザラザラとした質感と暗さを演出しています。 それだけではありません。すべての曲にサンプリング・ボーカルが入りますが、ピッチが変えられたり、エフェクトがかけられたりすることで、霧がかかったような不鮮明な響きになっています。不自然で、不気味な感じもします。 ボーカル同様に、低く立ち込めたようなシンセの音も入ります。スネア・ドラムの抜けのよい音、といったものは無く、バス・ドラムやシンバルも明瞭ではありません。 要するに、クリアな音がひとつもないのです。それでも、魅力的なサウンドです。僕にとっては病みつきになるアルバムです。 Burial は、ダブ・ステップのアーティストとして扱われています。ダブ・ステップは、レゲエから派生した音楽スタイルです。ですが、僕の印象では、このアルバムからレゲエ的サウンドを感じることはありません。それよりも、テクノ系の音楽に聴こえます。 どの曲にも、不鮮明ながらシンプルで骨太な「4つ打ち」のテクノ的ビートが存在しています。すべての曲に暗さが通底するにも関わらず、ダンス・フロアでほかのクラブ・トラックと一緒にかかったとしても、違和感がなさそうです。 最初の「Street Halo」から、そうした特徴的なサウンドが前面に出てきます。 冒頭から、チリチリ・ノイズと霧の立ち込めるようなシンセ、重く不鮮明なバス・ドラムという展開です。4つ打ちのビートにシンクロして、音数の少ない、唸るような低音も重なりますが、ベース・ラインといえるような明確な音ではありません。 さらに、小さく断続的に女性ボーカルが加わります。同じメロディーを繰り返しながら、少しずつ変化していきます。 2曲目「NYC」、3曲目「Stolen Dog」は、「Street Halo」

JOÃO BOSCO / GAGABIRÔ(タフタのドレス)~ギターを持った渡り鳥が魅せるボーカル

João Bosco(ジョアン・ボスコ) の「GAGABIRÔ」(邦題:タフタのドレス)は、1曲目の「BATE UM BALAIO ou Rockson do Pandeiro」(邦題:バライオのリズム)から、圧倒されるアルバムです。 アコースティック・ギターのテクニカルで素早いコード弾きに続き、掛け声のようなボーカルが始まります。 エーィ、エーエーィ、といった叩きつけるような声に続いて、短いフレーズの歌詞が繰り返し唄われます。同じメロディーかと思うと高音にジャンプしたり、目まぐるしい展開です。途中からキーボード(オルガン?)も加わりますが、同じようにリズミックです。 ベース、ドラムなどのリズム楽器は使われず、エレキ・ギターのカッティングもありません。にもかかわらず、強烈なドライブ感があり、ファンキーと形容したいくらいです。 それまでに聴いていた、ほかのどの音楽とも違う、乾いた熱風が吹きまくるような独特な曲調に、とても驚かされました。 2曲目「PAPEL MARCHÉ」(紙細工)では、曲調が一転します。爽やかな空気が漂うサウンドです。 ギターとキーボードに加え、ベース、ドラム、パーカッションも加わった、ごく普通のバンド編成です。音数が少ないせいか、広がりを感じます。ボーカルも、ファルセットの入る伸びやかな声です。それでも、終盤に加わる掛け声のような歌唱は、1曲目と共通するテイストです。 3曲目「PRETA-PORTER DE TAFETÁ」(タフタのドレス=日本盤のアルバムタイトル)は、快速のボサノバといった曲調です。 ギターとパーカッションのみの編成で、ボーカルは口元で軽く跳ねるような発声、パーカッシブな感じがします。 ここまで聴いて、このアルバムでは、何よりもボーカルの魅力に惹きつけられました。それぞれの曲調によって、微妙にテイストが異なります。メロディーだけでなく、曲のリズムをも、ボーカルが牽引しているような印象です。 また、多くの曲で、擬声語とも擬態語とも、スキャットともつかない、不思議な掛け声のような発声が加わります。 5曲目「GAGABIRÔ」(ガガビロ、原盤のアルバムタイトル)は、こうした魅力的なボーカルから始まります。断片的な歌詞があるようですが、ほとんどが掛け声のように聴こえます。(日本盤の解説では、1曲目とこの5曲目については歌詞の記載がありませ