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12月, 2020の投稿を表示しています

SLY & THE FAMILY STONE / FRESH ~最近秘密を知りました

Sly & The Family Stone(スライ&ザ・ファミリー・ストーン)の1973年のアルバム「Fresh」を最初に聴いた時、感じたのはある種の違和感です。サウンドが暗く不鮮明で、くぐもった感じがしたのです。 「録音状態が悪かったのかな?」と、思ったくらいでした。 時期としては'80年代の後半、輸入盤のCDだったと記憶しています。僕はその当時まで、ディスコ系の音楽や、テクノ・ポップ、フュージョンをよく聴いていました。違和感の原因のひとつはそれでしょう。これらのジャンルの作品は、音質もサウンドも、クリアで明快なものが主流でした。 もうひとつの理由は、彼らのそれまでの作品とのギャップです。 僕が最初に Sly & The Family Stone を聴いたのはその数年前のこと。'70年のベスト盤「Greatest Hits」です。 ブラスのリズミックなリフと高揚したボーカルの「I Want To Take You Higher」や、強く跳ねる(元祖?)チョッパー・ベースが前面に出た「Thank You Falettinme Be Mice Elf Agin」など、明快で強烈、ポジティブなイメージの曲が並ぶアルバムでした。 そのあと、'71年の「There's a Riot Goin' On(暴動)」も聴きました。これを転機として、Sly & The Family Stone のサウンドが一変したといわれている作品です。 たしかに、同アルバムでは「Greatest Hits」に比べれば、ずっと落ち着いていてシリアスな印象の曲が並んでいます。しかし、それでも「Fresh」のような暗さや不鮮明さは感じられませんでした。 とはいえ、違和感を持ちながらも「Fresh」を聴かなくなったわけではありません。その逆です。どこか引っかかる魅力があって、僕はしょっちゅうこれを聴いていたのです。 特に気になったのが、1曲目「In Time」と、2曲目「If You Want Me to Stay」です。 「In Time」は、リズム・ボックスにシンクロしたドラムから始まります。クラビネットのリフに、細切れのオルガンやギターの和音が加わります。 突き刺さるような高音は目立ちません。その代わり、なにかくぐもった感じが、曲の初

teebs / ardour ~空に絵の具で描いたイメージの音楽

Teebs(ティーブス=Mtendere Mandowa)のアルバム「Ardour」は、聴いていると、頭に自然と映像が浮かんでくるような作品です。 その映像は、アニメーションでもCGでもなく、ストーリーのあるドラマや映画のようでもありません。抽象的な映像です。 たとえば、抽象的な絵画が、空中に絵の具で描かれていくようなイメージです。ただし、描き手も絵筆もそこには見えません。色だけが塗られていくかたちです。 なお、Teebs はペインターとしても活動しています。このアルバムのアートワークも彼の手によるものです。そのことを知っているため、僕の頭には余計に映像が喚起されるのかもしれません。 1曲目は「You’ve Changed」です。漂うような、深くくぐもった音色の和音を背景に、カタカタ鳴る木質の音や、金属的な高音の打楽器によるシークエンスが散りばめられます。 いわゆる「宅録」的なサウンドであることは一聴してわかります。エレクトリックな機材を駆使し、プログラミングし、エフェクトをかけ、サンプリングもしています。 にも関わらず、機材のつくり出す音、という感じが僕にはまったくして来ないのが不思議です。自然な音に感じられるのです。なので、手書きの絵がイメージとして浮かびます。 さらに、重いビートのドラムもそこに加わります。ズッシリとしたバス・ドラムです。ただし、表現が矛盾しますが、軽やかでもあります。2曲目「Bound Ball」では、こうしたドラムがさらに前面に出てきます。 ちなみに、このアルバムは Brainfeeder というレーベルから出ています。アンダーグラウンド系のヒップ・ホップから派生した「L.A.ビート」あるいは「L.A.ビート・シーン」を代表するレーベルです。 そのためか、ヒップ・ホップや、ハウス、テクノといったクラブ系のレコードとともにDJがかけても違和感がないような曲も数多く収録されています。かといって、クラブ系だと割り切れる音でもない、一方、アンビエントといった風でもない…と、いったところです。 4曲目「While You Doooo」では、ハープのような音が背後に漂いつつ、前面ではラテン・パーカッションが鳴っています。このアルバムの中ではもっとも普通な感覚の親しみやすい1曲です。 5曲目「Moments」では、散りばめられる高いピアノのような音や、音