1984年から数年間の僕といえば、細野晴臣が主宰していた「Non Standard レーベル」の作品に魅了され続けていました。たとえば、細野氏自身による 「S-F-X」 、越美晴の「BOY SOPRANO」、MIKADO の「MIKADO」など…。 その流れで手にした1枚がこの「WORLD STANDARD」です。WORLD STANDARD(ワールド・スタンダード=鈴木惣一朗のアーティストネーム)によるファーストアルバムです。買ったのはCDで、'86年のことでした。 ところが、このアルバム、聴いてみるとまったくピンと来ませんでした。つまり、当時はがっかりでした。 どうやら、僕はこのアルバムに Non Standard レーベルらしい音を強く期待していたようです。それらは、ひとことでいうとテクノ・ポップ的、ニューウェーブ的なサウンドです。ですが、このアルバムからはそれらは全く聴き取れませんでした。存在してほしかったキャッチーなメロディも、躍動的なビートも探し出せませんでした。 たとえば、1曲目「太陽とダァリヤ」です。日本的なメロディは同じパターンの繰り返しです。奏でられる木琴や大正琴のような響きについては、展開に乏しい、古めかしい印象しか当時は残りませんでした。 そのほかの曲も、ゆったりとしていて静かなところに良さはありますが、「アンビエント」に括られるような魅惑的なレベルにまで踏み込むものとはいえません。ちなみにアンビエントは、当時いよいよその言葉が巷で使われ始めていた、いわば先進的なカテゴリーでした。 そんなわけで「WORLD STANDARD」は、ほどなく家の棚に眠った状態となりました。 ただし、その後もCDやレコードを整理するたび手に取りながら、手放すことはしませんでした。理由はひとえにこのアルバムが Non Standard レーベル作品、すなわち細野晴臣プロデュース作品だったからです。 「これほどの人が世に送り出した作品なのだから、きっとどこか素晴らしいに違いない。それがいつかわかる時がくるのでは」――と、そんな気持ちからでした。 そのいつかが昨年('21)やっと訪れました。3月に「WORLD STANDARD」はLPで再発売されたのですが、11月になり、僕はこれを中古店で見つけたのです。 「聴き直してみる機会だ」と思い、家の棚のCDとは
僕が出会ってきた忘れられない音楽、いまも聴いている曲を紹介します。なお、当ブログには広告掲載を行っているページがあります。